江津湖リリ禁とdepsと奥村和正


江津湖のリリース禁止条例案(江津湖地域における特定外来生物等による生態系等に係る被害の防止に関する条例(素案))に反対する署名は、9月5日で終了した。
到着した郵便物、そして各協力店舗で集まった署名を回収し、集計を開始するのは6日夜からとなる。
回収作業の都合上、最終の集計は8日までかかることになる。

つまり集計の間でも、遅れて届いた署名があっても、それらを組み入れていくことは可能だ。
とりあえず自分たちで出来ることはやった。
しかし、一縷の望みをかけて行ったこの行動も、周囲から入ってくる情報は常に厳しいものばかりだ。
でも、まだ何か出来ないか。もうちょっと何か出来ないか。
そんな事を考えていた時、depsのファンイベントが北山ダムであることを知った。

パブリックコメントの募集時から署名活動に至るまで、幅広い情報拡散を行い、多くのバサーからの協力をいただいた。
しかしその中に、我々の釣りを楽しませてくれる多くのメーカーや、釣りを指南してくれたプロたちの声は無かった。
外来生物法や各地でのリリ禁の反対運動の際に、声高らかに署名を呼びかけたあのプロたちも。
なんだか、「無かったこと」になっているかのように情報がスルーされている。

そんな中、終始一貫して声を上げつづけ、情報を拡散してくださった方もいる。
その一人が、deps社長・奥村和正氏。

このdepsの北山でのイベント時に、署名の呼びかけが出来ないかと、藁をもすがる思いで無礼を承知で打診したところ、二つ返事で快諾していただき、急遽6日に北山ダムへと向かうことになった。
depsのファンイベント「「ウェブメンバー・フィールドイベントフィッシングツアー2014」。今年は北山ダムでの開催。
午前中は湖上での大会が行われていた。今回一緒に同行したhiRo_くず、Flameは以前このファンイベントにも参加していたので、どういったイベントなのかを聞きながら、釣り競技終了前に我々も到着。



ここ2、3週間、人よりも多く釣り場や釣具店に行っていても、今日もロッド1本も持たずに署名用紙を小脇にかかえるのみ。

湖面を見た瞬間、釣り人の本能がムクムクともたげはじめ、やっぱりロッドを持ってこなかったことを一瞬だけ後悔する。



しかし今日もやることは多い。

まずは準備をしているスタッフさんに挨拶をすると、きちんと署名用のコーナーを設けていただいた。
我々としては、セミナーのジャマにならないようにと、隅っこに自前のタープとテーブルを置かせて貰うことを想定していたのだが、それらの一つさえも車から出すことなく、競技前に受付を行っていた一番いい場所を提供してくれた。
しかも、全てがスケジュールが終わるまでいていいと言う。


釣りが終わり、参加者が昼食を食べている時、午後の目玉である奥村社長のセミナーが始まるまでの時間に我々の署名活動は開始した。



メーカーのファンイベントに無理矢理押しかけた身である。
場所を提供していただいたとはいえ、どう呼びかけようかと迷う。
そこはメーカーとそのファンのためのイベントである。
急に押しかけた身が、署名の呼びかけを声高らかに行って、その空気を一変させるわけにはいかない。

でも、そんな悩みもすぐに杞憂だと分かる。
釣りを終えて帰ってくる参加者の皆さんに、スタッフの方が何度もアナウンスしてくれる。
「江津湖のリリース禁止の反対の署名を受け付けています。ご協力をお願いします」と。


もう何度も。

幾度となく。



イベントとは一切関係のない我々に対し、何度も行われる呼びかけ。
署名の人が切れたり、時間が空くたびにアナウンス。

ファンの皆さんが愛するdepsとはまるで関係のない我々のブース。共感はしてても署名を書きに来るという行為は何かしらの逡巡があるのは私だって理解できる。
それを最大限やわらげようとしてくれるスタッフの心づかいには感謝の気持ちでいっぱいだ。


さて、午後の目玉であるセミナーがはじまる。
周囲は熱狂的なdepsファン。もちろんその耳目は奥村社長が今日、どうやって北山を攻略したかに集まる。
ファンであれば誰もが聞きたい奥村社長の声。

午後のメインイベントである。

そこにいる多くのファンは誰もしゃべらない。拍手のあとは、奥村社長の第一声に耳を傾ける。
我々も行っていた署名活動を中止して、奥村社長の話を聞けるチャンスだ。


ここで、予想外の…まったく予想していなかった言葉が社長から発せられた。


「今日…熊本からわざわざ江津湖のリリース禁止の反対署名を…」





これはあくまでもdepsファンのためのイベントである。
日頃からdepsを愛するファンに対し、その憧れの中心である奥村社長とともに釣りをし、depsのコンセプトと意志が埋め込まれたアイテムが展示され、ファンのためのグッズ販売、そして奥村社長の生の声を聞けるイベントである。

depsのファンに対する感謝のイベントでもあり、今後の商品をアピールする場でもある。

そんな大事なイベントの中の、まさにメインイベント。
普通であれば、この日の状況等を語ったり、どう攻略していったかを話していく大事な場面だ。

その第一声が、我々の江津湖の問題についていきなり触れてくれた。

そして、いきなり代表者に挨拶を求められた。

もちろん、挨拶をする場面も想定はしていた。
その機会を頂けるとすれば、イベントがつつがなく終了した最後の挨拶の時であろう。
お邪魔している身分である。その場面はない可能性が高い。
そう思っていた私にはとてつもない衝撃だった。

普通の企業イベントなら、こんな割り込みで入れていただいた我々にいきなり時間を割くなんてあり得ない。

ジャンボ鶴田vs天龍源一郎のメインイベントに、いきなり無名の観客が乱入したようなものだ。
前田日明vsヴォルクハンの一戦に、まだ無名の練習生、高阪剛が乱入するようなものだろうか

ええぇぃ、いや、そんな例えはどうでもいい。





我々の話したって、一銭の得にもならないのに。

このdepsという企業とファンにとって大事なトークの一声目がリリ禁。

Twitter、facebookを通して、我々の問題に真摯に向き合ってくれた奥村社長の本気が見えた。

私だって講師の仕事してるし、人前でアドリブで喋るのは慣れている。
しかしこの衝撃、いや、衝撃というよりこれだけ大事に考えてくれてたのかという感激で、一瞬だけ頭が真っ白になった。


江津湖のこと、熊本のこと、条例のこと、必死に語らせてもらった。
普通は起承転結の要点だけまとめてれば、あとは言葉が勝手に出てくるタイプだが、しゃべりはじめの冒頭から感激が頭の中をグルグルして、そして結婚式でいつまでも挨拶するおっさんのように、奥村社長の声を聞きたいファンを待たせてはいけないという思いがあって、完全に話しの起承転結が狂った。

講師やってる立場としては失格のトークだった。でも必死に思いを伝えさせてもらった。
周囲はよく見えていたし、聞いていただける方がうなづいている姿も見えた。
どれだけのことが伝わったかはわからないけれど…
後でSHINGOに聞いたら「りまさん、(思いが強くなりすぎて)泣き出すんじゃないかって思った」って言われた。Flameからは「私、泣きそうだった」ってwww

ちょっと長くなりすぎたと反省した私の挨拶の後も、奥村社長は本来のテーマに入ること無く、リリ禁についての持論を語ってくれた。

そしてようやく奥村社長のセミナーが始まった。
これを聞きたいがために、みんながここにいることは、誰もが喋ることなく、奥村社長を注視しつづけていたことが全てを証明している。

そんな大事な時間をリリ禁という危機を迎えている我々、熊本のバサーのために割いてくれたのだ。

その後は、depsファン限定のアウトレット品の販売会。この賑わう販売の間に、奥村社長のあの熱の籠もったリリ禁論のおかげか、さっき以上の方々が署名に訪れてくれた。
1枚10名の署名用紙が埋まり、何度もめくる作業に追われた。

また、この合間にもいろんな方が声をかけていただいた。
「任せっぱなしで申し訳ないな」という声まで。

その後は抽選会が行われ、最後にもう一度奥村社長の挨拶。
ここでもリリ禁の話。



我々がこの運動をしていく中で、何かのバリアか圧力でもあるんじゃないかってぐらい周囲のいろんな人やメーカーが沈黙を貫く中、唯一声を上げ続けた人。

私の舌足らずな挨拶の全てを埋めてくれるかのような話で、このセミナーは終わった。



熊本ネットバサーズが秋に行うイベント「KNBオープン(昨年まではバンクフィッシャーズオープン)」でも、depsさんからは毎年協賛をいただいている。
私は単なる下手くそなサンデーアングラーで、ルアーもタックルも無頓着な男だったが、今回のリリ禁の運動を通じて、業界内の様々な人の思いや本音も垣間見ることができた。

リリ禁に対する状況は極めて不利で、悲しい情報ばかりが伝わってくる。

でも、そんな釣りさえも辞めたくなるような、嫌いになるような(実際にこの北山に来るまでの間、もう釣り辞めちまうか、という思いもわずかだがあった)状況の中、企業の利益だけでなく、その使い手とその使い手が住むフィールドのことも真剣に考えてくれる人がいることを肌で知った。



まだリリ禁の答えは出ていない。

とはいえ、圧倒的に不利な状況だ。

答えが出ていないうちからグチや文句を言うのはやめよう。とにかく行動しようと、協議会メンバーと話し合い、そしてKNBの有志と行動した。

この日の出来事は、私にとって、きっと熊本にとって財産になる。
こんな熱い想いを持つメーカー、社長、そしてスタッフもいるのだと知ることが出来たのだから。

バス釣りをはじめて20数年、KNBが設立してから15年。
一切上達する気配が見せない私のスキルの中でも、時間だけは結構経った。
そんな年月の中で、KNBが取材協力等を行う機会が何度かあり、そのきっかけはあったものの、プロアングラーという人に憧れを持つことがなかった私はまだ誰とも写真を撮ったことがない。
でも、今日だけはこの人と写真に収まりたいと思った。
うちのリリ禁のフライヤーまで気軽に持っていただいて。

奥村社長、depsのスタッフのみなさん、そして場所を提供していただき、署名にまで協力いただいた「うおまん」のスタッフのみなさん。
そして何より、奥村社長との交流の場に押しかけてしまってご迷惑をおかけしたはずのdepsファンの皆様。

本当にご協力ありがとうございました。

まだまだ釣りが好きでいられそうです。
いや、ますます釣りが好きになったのかもしれない。




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